喘ぎ声



正直、怒りとかそういう感情より先に驚きが走った。
臨也という人間がいかに突飛な存在であるかは静雄だって知っている。けれど、その突飛である所の方向性が違うのだ。
今までに静雄が知っていた、折原臨也と全く。





「ふ…はふっ…ひ、ひひゃや…?」
「いいから、俺の指食い千切りたくなかったら大人しく声だしなよ」


なんだその脅し。間違ってないか。
ノミ蟲の指なんてどうなってもいいに決まってる。静雄がそう思う事くらい想像がつかない訳がないのに。
それでも、臨也は酷く真剣な顔をして静雄を覗きこんでいた。その指を、静雄の咥内に突っ込んだまま。








いざしずお題、喘ぎ声。









まるで相思相愛の恋人同士のように優しく体を撫でて、キスをして舐め合って。
小さく窄まった穴も丁寧に解していざ挿入。
臨也がちょっとまって、と言い出したのはそのタイミングだった。
静雄としてはそんなのが面白いわけがない。身体だって気持ちだって最高潮に盛り上がってるというのにどういうことだ。
いいから入れろ、とりあえず一回イかせて?そうやって身体を捩っても臨也が聞き入れるわけがないこと位知っていたけれど。




「俺、今日はシズちゃんに声出してもらいたい」
「…声ぇ?」
「だっていっつもなんか噛んじゃうだろ、アレやなんだよねえ…なんかもっとこう、キモチイイ!ナンニモワカンナイ!みたいな感じでさあ、にゃんにゃん」
「えええキモチワルイ!死ねばいいのに」
「好きに言ってちょうだいってわけで、今日は声殺すの禁止だから」


そんな事言われても。
静雄が声を殺すのは自身のプライドの云々の問題であって、それは臨也がどうこう言う事じゃない。男なのにとか俺の方がチンコだって背だって大きいし力も強いのにとかそういった事を全て飲みこんで大人しく抱かれているのだ。
それが好き勝手している臨也に色々言われるのは我慢ならない話だった。


「つうわけで断る」
「うんなんか考えてたのはわかるけどどこからそうなったのか俺にはさっぱりだよ!」
「とりあえず や だ 」
「おれもやだもん!シズちゃんのばか!」
「ばかぁ?ってめ、コロ…んあっ」
「シズちゃんのわからずや!んっ…こうしてやる!」
「っ…そのキモチワルイ喋り方、んはっなんとか……しっ…も、喋ってんだから触んなよ!」


臨也は頬を膨らませながら静雄の身体中を弄る。一度極限まで昂った感覚は戯れの様なその愛撫にもしつこく反応した。
慌てて唇を噛みしめて声を出さないようにすると、一層機嫌を悪くした臨也が立ちあがった乳首に歯を立てる。


「ばーか、シズちゃんのばーか」
「ひっん…はっは、う…も、もう入れろよお…」
「だが断る」


ふざけんな!そう言おうとした時だった。臨也の指が強引に咥内に捻じ込まれる。
親指を除く四本の指が静雄の舌を捕え、中の粘膜を蹂躙していく。溢れだす唾液が絡む、零れる。一瞬噛みしめそうになって、慌てて力を抜くと臨也が笑った気配がした。





「ふ…はふっ…ひ、ひひゃや…?」
「いいから、俺の指食い千切りたくなかったら大人しく声だしなよ」
「ふはあ?ふひゃへ、へん…はうっ」
「いい?入れるよ?」
「ま、まっへ、ひょ、ふひ…!」


へへ、かーわいい。


臨也が笑って、そのまま中に入り込んでくる。
口の中も、下も、同時に犯されていく。めりめりとした感覚を敏感に拾う身体と、粘着質な音を立てる繋がっている場所、跳ね上がるのは多分心だった。


「ふあっん、あっひょ、いひゃああっ」
「んっきっつい…んあっ」



静雄に負けず劣らず喘ぎながら臨也が腰を進める。
水音だけが響いていた部屋に、一杯に溢れる2人の声、熱。
全てが煽り、反響して広がっていく。そして。



ばか、苦しい、うっさいばあか。


喘ぎ声の間に囁かれるのは、意外と甘い―――。













/お題、喘ぎ声。
言い訳はしな…



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